時計のパーツ◆ベゼル◆

◆ベゼル◆ 装飾性の追求、計時機能の獲得

  ベゼルの本来の役割は、風防を押さえることにあります。いわば「縁」であり、腕時計にとってはなくてはなりませんが、かつては極めて地味な付属品でしかなく、仕上げもケースと同じものを施されていただけでした。
  ところが、懐中時計の時代の成熟期から、ベゼルは装飾性を獲得しました。端的な例は凹凸を刻んだ「コインエッジ」、段差を設けた「ステップド」、文字盤装飾だったギョーシェをベゼルに用いた「クレール・ド・パリ」などです。装飾性を獲得したベゼルは、さらに機能性も手に入れました。回転ベゼルの登場です。1920年代の一部の航空時計は、これに60分割スケールを刻み、秒針に合わせる事で、すばやい秒単位の時間あわせを可能にしました。50年代には、それを応用して潜水時間を記録するダイバーズ、ロレックス「サブマリーナー」が誕生。さらに24時間インデックスを配した「GMTマスター」が登場するに至ります。

ベゼル・ポリッシュ 【ポリッシュ】
ケースと同様に、表面が鏡同様にまで磨き込まれたベゼル。ケースはヘアライン仕上げとして、まるでコンビケースのようにコントラストを強調することもある。
ベゼル・ヘアライン(パラレル)" 【ヘアライン(パラレル)】
縦方向に毛髪のように繊細で直線的なラインを施す。ラインが平行に並んでいるタイプをパラレルという。角型ケースに多く採用され、ケースの仕上げとの調和が美しい。
ベゼル・ヘアライン(ラディアル) 【ヘアライン(ラディアル)】
文字盤から拡散するようなヘアラインをベゼルに施している。角型以外の形状で、ヘアライン仕上げのケースの場合、ベゼルの存在感を強調することになる。
ベゼル・ヘアライン(コンセントリック)" 【ヘアライン(コンセントリック)】
角型以外のケースで、同心円状のヘアラインを施したもの。形状なりに施されたケースのヘアラインと調和し、時計全体の色調を統一感が取れたものとする。
ベゼル・ステップド 【ステップド】
段差が設けられたベゼル形状。段差が多いほど複雑な形状となるため、加工の難易度も高くなる。古くから見られるデザインで、時計にクラシカルな雰囲気を与える。
ベゼル・コインエッジ" 【コインエッジ】
硬貨の外縁に刻まれるギザギザと同様のパターン装飾。「ホグネイル」と称することもある。クラシカルな雰囲気がある。回転式ベゼルでは滑り止めの効果もある。
ベゼル・クルー・ド・パリ 【クルー・ド・パリ】
マス目状にベゼルにラインを刻み、マス目ひとつひとつをピラミッド状に仕上げる「パリの石畳」の意。考案者は18世紀の天才時計師アブラアン=ルイ・ブレゲ。
ベゼル・ピラミッド" 【ピラミッド】
ベゼル表面にピラミッドのような三角状の凹凸を、波型に刻み付ける。金ムクやコンビ仕様のシンプルな時計で、高級感を強く譲り出す効果がある。
ベゼル・エンジン・ターンド 【エンジン・ターンド】
細やかな凹凸と、インデックスに合わせた バー状の張り出しを組み合わせたもの。名称の由来は諸説あるが、回転するエンジンのように見えるからという説が有力だ。
ベゼル・サンダーバード" 【サンダーバード】
回転ベゼルにエンジン・ターンド装飾をあしらい、インデックスを掘り込む。ロレックス「デイトジャスト」のサンダーバードモデルで採用されていたことに由来。
ベゼル・両方向回転式 【両方向回転式】
手動でどちらにも回転するベゼル。60分インデックスなら分単位の経過時間の記録に。24時間インデックスなら24時間針との組み合わせで第2時間帯を表示。
ベゼル・逆回転防止式" 【逆回転防止式】
回転ベゼルの内側に、時計回りには回転しないようストッパーとなるピンをセット。ダイバーズで、潜水中の経過時間が短くなるような誤作動や誤操作を防止する。