ムーブメントの表側に組み込まれるパーツ

  ムーブメントの表側とは、文字盤とは反対側で、時計の裏側に来ます。
裏スケルトンの時計で見られる美しい内部構造は、この表側の姿です。

  (1) 1番(香箱)受け (barrel bridge)
 香箱(一番車)を支えている受けで、受けの内部に巻き上げ機構がくみこまれています。
  (2) 1番受け(裏側) (barrel and train wheel bridge)
 内部に収められた車の状態が確認できる、1番受けを裏側から見たところです。
 (3) 角穴車 (ratchet wheel)
 ゼンマイを巻くときに必要な歯車で、中央の歯車の穴が角形になっています。そのため歯車と軸がしっかりとかみ合わさりゼンマイを巻き上げる強い力にも耐えられるようになっています。
  (4) 輪列受け
 輪列を固定している受けです。ETA輪列の場合は3番車、4番車、ガンギ車を固定します。
 (5) 4番車 (seconds wheel)
 3番車とガンギ車の間にある歯車で、ガンギカナとかみ合っています。60秒で1回転します。スモールセコンド付時計の場合スモールセコンドの秒針と同軸になります。
 (6) 香箱(1番車)
 ゼンマイを収納している箱型の歯車のことです。ゼンマイが巻きすぎなどで断切して他の部品を破損することを防ぐ役割を持っています。一般にそれ自身が回転する「回転香箱」が用いられ、その場合は「香箱歯車」が「1番歯車」の役割を担い2番カナへ動力を伝えます。
 (7) ガンギ車
 輪列を介して伝わった動力をアンクルに伝え、また調速を輪列に伝えます。
 (8) 3番車 (third wheel)
 2番車から伝わってきた動力を4番車へ伝える働きをする増速歯車です。基本輪列を構成するパーツの一つで、長年使用された自動巻き時計でかなりの確率で交換が必要となる部品の一つです。
 (9) 2番車 (center wheel)
 分針と同軸にある歯車で、香箱から動力を増速させて3番車へ伝えます。ムーブメントの中央に配置され、一時間に一回転します。
 
 (10) センターチューブ
 2番車軸の代わりに地板に取り付けられて、4番車の軸受けになっています。
 (11) 地板 (main plate)
 ムーブメントの本体、各部品がこの板に組み込まれてムーブメントを形成します。
 (12) こはぜ受け 
 こはぜバネを押さえている受けで、香箱受けに取り付けられています。
 (13) こはぜバネ (click spring)
 角穴車などの車を一方方向に回転させ、巻き戻りを防ぐ部品です。
 (14) 丸穴車中間車 (intermediate ratchet wheel) 
 丸穴車と角穴車をつなぐ歯車です。こはぜバネによって規制されます。
 (15) 丸穴車 (crown wheel)
 巻き上げ機構パーツの一つで、リューズからツヅミ車、キチ車と伝えられた動力を角穴車に伝える役割をします。
 (16) 角穴車中間車 (intermediate ratchet wheel)
 角穴駆動車と角穴車の間に入る歯車です。こはぜバネによって規制されます。
 (17) テンプ軸受け上部
 インカブロックとも呼ばれ、耐震愛石、穴石、押さえバネで構成されています。
 (18) 角穴車駆動車
 自動巻機構の伝え車から角穴車に巻き上げの回転を伝えるための歯車です。
 (19) 緩急針 (regulator)
 ヒゲゼンマイが動く距離(有効長)を調整し、調速を変更するための針です。
 (20) ヒゲ持ち
 ヒゲゼンマイの一番端の部分を保持するための部品です。
 (21) テンプ受け
 天真を支えて、テンプのユニットを保持するための受けです。
 (22) テンプ (balance with hairspring)
 テン輪、テン真、振り座などで構成される脱進機の一部で、輪列、ガンギ車、アンクルと伝わってきた動力をテンプの中心にあるヒゲゼンマイとともに規則正しい速度に変換する働きをしています。テン真を支えテンプのユニットを保持する板をテンプ受けといいます。
  (23) 巻き真 (winding stem)
 リューズとつながって、ゼンマイを巻いたり時刻を合わせたりするための軸のことです。
 (24) テンプ軸受け下部
 テンプ軸受け上部との間でテンプの軸を受けている部品です。
 (25) キチ車
 巻真と同軸にあり、ゼンマイを巻き上げる力を巻真から丸穴車へと伝える歯車です。
 (26) キチ車
巻き真を通してリューズと連結され、ゼンマイを巻き上げる力を巻き真から丸穴車へ伝える歯車です。
 (27) ツヅミ車 (clutch wheel)
 巻き真の針回しとゼンマイを巻く機能を切り替えている、鼓型の歯車です。
 (28) アンクル (pallet fork)
 テンプとガンギ車の間にある脱進機を構成するパーツです。2つの爪をもち、その形が船の錨型をしているところからこう呼ばれます。この2つの爪がガンギ車を交互に進めテンプの振動を調整します。このアンクルを持つ脱進機構をアンクル脱進機といい、アンクルの軸を支える板をアンクル受けといいます。規則正しい輪列運動をするために欠かせないパーツです。