用語集【か~こ】
外装
ケースや文字盤、針などムーブメント以外の部分の総称。ムーブメントを保護するケース、時間を示す文字盤と針、ベゼルなど時計を構成する上では必要不可欠なパーツばかりである。
懐中時計
主に16世紀から20世紀初頭まで使われていた文字通り懐に入れて使う時計。蝶番開閉式の蓋を持ち、チェーンやひもを付けて衣服に付けたりポケットに入れたりして携帯した。蓋には美しい装飾が施され、美術品としての価値も高いものもあった。しかし、20世紀になると腕時計が主流となり人気は衰退していった。提時計、ポケットウォッチなどとも言う。
回転錘
ローターの項参照。
回転ベゼル
経過時間や第2時刻を表示するなど、様々な使い方ができる回転式のベゼル。1929年に海軍将校のP.V.H.ウィームスが考案し、ロンジン製の航空時計に搭載されたのが史上初である。逆回転しないラッチェット式の回転ベゼルは、ロレックスのターノグラフが最初となる。
角穴車
ゼンマイを巻くときに必要な歯車で、中央の歯車の穴が角形になっている。そのため、歯車と軸がしっかり噛み合わさりゼンマイを巻き上げる強い力にも耐えられるようになっている。
角穴ネジ
香箱真と同軸上にある角穴車を香箱真に留めるためのネジ。ドーム型のものや、ねじ込むと角穴車の面と同じ形になるものなど形状は様々。
ガスケット
リュウズ部分の防水性を高めるために使用される合成のゴムパッキンのこと。リュウズ部分は一番水分が入りやすいので、2重または3重に取り付けられる。ダイバーズウォッチなどの防水が必要な時計には必ず取り付けられている。
カップリングクランチ
クロノグラフに付いているストップウォッチ機能の鍵となるパーツで、スタートを押すとトランスミッションホイールとクロノグラフランナーを連結する働きをする。ストップを押すと解除される。
カップリングクラッチホイール
クロノグラフ機構において、4番車と連動して常に回転しているドライビングホイールの動力をクロノグラフランナーに伝える役目をする。スターとボタンを押すとピラーホイールの歯の間にカップリングクラッチの先端が落ちる。それと同時にトランスミッションホイールがドライビングホイール、クロノグラフランナーと噛み合うようになり、1分間を計測するクロノグラフ秒針が動き出す。
カナ
車を構成するパーツのひとつで、歯車の動力を伝える部分。歯車の上または下に付いた歯切りした部分で、このカナに歯車が噛み合わさり他の歯車が回るようになっている。それぞれ2番歯車についているカナを2番カナ、3番歯車についているカナを3番カナと言う。
カーベックス
手首にフィットするように手首の形に合わせてカーブさせているケースのこと。1937年にスイスのグリュウエン社が発売したものは、ケースに合わせてムーブメントの形状もカーブしている。
カボション
面がカットされた宝石に対し、つるつるにカットされたものを指す。時計ではリュウズの先端に取り付けられた宝石のこと。装飾目的として付けられている。
カム式クロノグラフ
パーツを減らすため、ピラーホイールの代わりにカムを使用した廉価版クロノグラフのこと。基本的な役割はピラーホイールと変わらないが、ピラーホイールは回転運動なのに対し、カム式は軸を中心とした首振り運動となる。
ガラス
文字盤を保護する風防ガラスのことを言う。昔は無機ガラスが使われていたが現在ではアクリル樹脂や人口サファイアが使われている。アクリル樹脂は安くて割れにくく軽いという利点があるが、キズが付きやすく状況によっては変色することもある。逆に人工サファイアは傷つきにくく変色もほとんど無いが値段が高い。レイズド・クリスタル、フラット・クリスタル、クリスタル・コンケイブ、ラウンド・ドーム・無反射コーティングなど様々な形状のガラスがある。
カルーセルウォッチ
時計の向きによってかかる重力による姿勢差を自動補正するというトゥールビヨンウォッチと異なる点はケージが4番車ではなく、3番車の周りを回転するという点にある。
カレンダー機構
デイト表示やムーンフェイズ、パーペチュアルカレンダー、月、日、曜日を表せるトリプルカレンダーなど、シンプルなものから複雑機構まで月や日にちなどを表示する機構のことを言う。
側
ケースのこと。ムーブメントが組まれた時計本体のことを言う。金、銀、ステンレス、真鍮など素材は様々。
側開け
ケースの裏蓋を開ける道具。オープナーの項参照。
側留めネジ
ムーブメントと側(ケース)を留めるためのネジ。
ガンギカナ
4番車から伝わってきた動力をカンギ車へと伝える役割をする小さな歯車。つまりカンギ車の軸の周りに付属しているカナのこと。
ガンギ車
アンクル脱進機に使われるパーツのひとつ。アンクルの2つのツメ石が交互に噛み合うように作られた歯車で、テンプに一定の力を与え左右に回転運動をさせる役割と、テンプからの振動周期を規則正しく歯車に伝える役割を持っている。
緩急針
時計の進み具合を調整する針で、ヒゲゼンマイに接していて針を左右に動かすことによってヒゲゼンマイの有効長を調整している。
カンヌキ
時刻合わせに必要なパーツでツヅミ車の溝に設置されている。リュウズに引っぱられたオシドリによってカンヌキが押され、ツヅミ車と小鉄車を噛み合わせる。そして小鉄車から中間車へと伝わり日の裏車を介して筒カナを回し、時刻を合わせることになる。
機械式時計
巻き上げたゼンマイが戻る力を動力にして針を動かす時計のこと。リュウズを巻くことによってゼンマイが巻かれる手巻きと、ローターが回転することによってゼンマイが巻かれる自動巻き(オートマチック)とがある。機械時計、メカ時計などとも言う。
キズ見
時計修理の時などに、細かい部品を見るためのルーペ。メガネに付けるタイプや頭に固定するバンドタイプ、また倍率によって様々な種類がある。
キチ車
巻き上げ輪列パーツのひとつで、巻真を通してリュウズと連結されている。リュウズを巻くとキチ車が回り、接している丸穴車が回転してゼンマイが巻き上げられる仕組みになっている。
逆回転防止ベゼル
主にダイバーズウォッチに使われる一方向のみに回転するベゼルのこと。ダイバーが潜水時間を測るときに使うため、誤って逆回転してしまい、測定時間が狂わないようになっている。
ギャーシェ彫り
文字盤に掘り込まれた細かい模様のこと。現在では機械による掘り込みや型押しのブレスが主になっているが、ブレゲなどの一部のブランドでは職人による手旋盤で彫り込まれている。装飾目的の他に光の反射を防止する効果もある。
ギャビノチェ
18世紀のスイスで活躍した時計職人の総称。ヴァシュロン・コンスタンタンの創業者ジャン・マルク・ヴァシュロンなどの独立性が強い職人で、キャビネ(屋根裏部屋)を工房としていた職人が多かったため、こう呼ばれるようになった。
キャリバー
ムーブメントの型式を表す用語。「Cal.」で表示されるムーブメントのサイズや機構を数字やアルファベットを使って表す場合が多い。例えばCal.3541やCal.30CHなど。
協定世界時(世界標準時)
国際協定により定められた世界共通の標準時で、世界各国の標準時はこの協定世界時を基準にして決められている。原子時(UTC)をもとに閏秒を挿入することによってグリニッジ標準時との差を調整している。現在のフライトスケジュールはこの協定世界時を基準にしている。
均時差
視太陽時から平均太陽時を引いた差のこと。視太陽時とは実際に1日に太陽が動いている時間で、平均太陽時とは1年の太陽の動きの平均時間のことを言う。
空気潜水用防水
最低100mの潜水に耐えられる防水性能のことで、JIS規格とISO規格によって検査方法と要求事項が規定されている。圧縮空気を吸って潜水するスキューバダイビングレベルの潜水深度に耐えられるよう規定されている。スキューバ潜水用防水とも言う。
クオーター・リピーター
ミニッツ・リピーターから、分単位の数を知らせる鐘の音色を省略したモデル(リピーターの項目参照)。
クオーツムーブメント
電池を動力源として、水晶振動子と電子回路、ステップモーターで調速&運針を行なう時計のこと。調速の基準が機械式時計が毎秒5~10振動のテンプに依存するのに対し、クオーツ式は水晶振動子の毎秒3万2768振動が基準。そのため精度も機械式に比べ数倍~数十倍にアップし、機械式時計の一般的なモデルが1日の精度誤差が平均±10~20秒前後であるのに対し、クオーツ式の一般的なモデルでは1ヶ月の精度誤差が平均±15~20秒前後となっている。
鎖引き装置
ゼンマイはほどけていくにつれてトルクが減少していく。その減少を補いムーブメントに均一に動力を伝える働きをする。
クッションケース
その名の通りクッション形をしており、文字盤は丸型のタイプのケース。カジュアルで優しい印象を受けるため、女性に人気の形。
グラスヒュッテ
ドイツの時計産業の中心地でザクセン州、ドレスデンの南方に位置する。その歴史は19世紀末から続いたが中断の後、近年復活を果たした。今でもグラスヒュッテオリジナルやランゲ&ゾーネ、ノモスなどの高級ブランドが集まっている。
グラブツースレバー脱進機
イキリスの時計師トーマス・マッジが18世紀末頃に考案した、2つの爪を装備したアンクルとレバー、ガンギ車でテンプの動きを制御する脱進機。ガンギ車とテンプの回転を、レパーを介してアンクルが制御する構造になっている。作動安定性と高精度化に優れた特性を有し、現在の脱進機構のルーツとなったメカニズムで、現在も機械式腕時計のほとんどにこの方式の脱進機構が採用されている。
グランドコンプリケーションウォッチ
うるう年も無調整で自動表示できるパーペチュアルカレンダー、重力による姿勢差を自動補正するトゥールビヨン、ストップウォッチ機能のクロノグラフ、時刻を知らせるミニッツリピーターの4つの複雑機構をすべて搭載している時計のこと。1つでも高い技術を要する複雑機構を4つ組み合わせるので、膨大な時間と高度な技術が必要となる。オーデマピゲなど一部の高級ブランドに見られる。その名の通り最高技術の結晶であり、至高の一品である。
グランドストライク
自動的に正時と15分おきに音で現在時刻を知らせ、リピーターと同じように操作することによっても、現在時刻を知らせることができる機構。毎時と15分おきに自動的に鳴るものをグランソヌリ、毎時に自動的に鳴るものをプチソヌリと言う。これに対し、任意の時間を知らせる機能をミニッツリピーターと言う。これに対し、任意の時間を知らせる機能をミニッツリピーターと言う。複雑機構のひとつ。
クル・ド・パリ
「パリの爪」の意味を持つ宝飾デザインで、フランスで300年以上継承される伝統あるデザイン。小さなピラミッド型が連なったような形をしていて、腕時計にはベゼル部分に使われる。アブラアン=ルイ・ブレゲが初めて時計に採用した。
車
ゼンマイに蓄えられた動力を香箱車からカンギ車まで伝えるためのパーツ。ホゾ、カナ、ウデ、リム、歯車から構成されていて2番車から4番車まである。2番車は1時間で1回転し、4番車は1分間で1回転する。
クロコダイル
本来はアリゲーターやケイマンなどと同様にワニの一種を指すが、革皮用語ではワニ革の総称として使われる。ベルトの表革として使われる高価な素材。
クロック
一定の姿勢で動いている置き時計や掛け時計、柱時計などの総称。ラテン語で鐘を意味する「cloccal」が由来となっている。
クロノグラフ
標準の時計機能にストップウォッチ機能が付いた時計のこと。始動、停止、再始動、リセットができ、60秒で1周するクロノグラフ秒針が30分計や12時間計と連動して経過時間を測定する。なお、初めて商品かされたクロノグラフは懐中時計で、1897年に発表されたロンジンのルグランである。
クロノグラフランナー
クロノグラフ針に付いている1分間で1回転する歯車。スタートボタンを押すとドライビングホイールからトランスミッションを経由してクロノグラフランナーが回転、そして計測が開始される仕組みとなっている。
クロノプラン
任意に指定する時刻を記録することができるクロノグラフのこと。クロノグラフやカレンダーなどの複雑機構を得意とするモバード社が独自に開発したもの。
ベゼルの内側に1から12、外側に0から60までの数字が書かれている。
クロノマチック
ブライトリング、ホイヤー、ハミルトン、ビューレンが開発した自動巻のクロノグラフムーブメント(キャリバー11)で、リューズが左側にくるのが特徴。トラブルが多いため、すぐに製造中止となった。
クロノメーター規格
スイスの時計製造協会が1957年に制定した規格で、15昼夜かけて厳しい試験が行なわれ、その試験を通った時計にだけ与えられる称号。現在はC.O.S.C(クロノメーター検定協会)が行なっている。5種類の置き方と3つの異なる温度に24時間さらし続け、毎日制度を検査する。詳しくは1~2日目はリュウズを左にして(垂直姿勢)温度23℃。3~4日目はリュウズを上にして(垂直姿勢)同じく23℃で。5~6日目は23℃でリュウズを下にして(垂直姿勢)。7~8日目は23℃で風防側を下にして(水平姿勢)。9~10日目は23℃で風防側を上にして(水平姿勢)11日目は8℃で風防側を上にして(水平姿勢)。12日目は23℃で風防側を上にして(水平姿勢)。13日目は38℃で風防側を上にして(水平姿勢)。14~15日目は再び23℃でリュウズを左にして(垂直姿勢)、という試験が行なわれる。この結果日差が-4秒から+6秒以内の場合、公認クロノメーターとして認定される。
クロワゾネ
極細のゴールドワイヤーで図柄を描き、そこにエナメルを施していく伝統的な技法。時計では文字盤に使われる。高度な技が要されるため、職人の数は少ない。和名は有線七宝と言う。
軍用時計
時計メーカーがアメリカ国防省の定めたミル・スペックと呼ばれる規定に基づき製造、供給する時計のこと。
また、既に市販されている時計ながらも軍が公式に採用している時計のことを言う。過酷な状況にさらされる軍事用時計の発達があったからこそ防水性や防塵性、耐震性が発達してきた。イギリスをはじめとして、その他多くの国でも採用されている。
携帯精度
気温5℃~35℃環境下で、腕時計を最低1日8時間以上装着しているときの精度のことを言う。腕時計は気温5℃~35℃の間で最も精度が安定するように調整される。
ケース
文字盤やベルト部分を除いた胴体部分のことを言う。素材や形は様々で、真鍮、金、プラチナ、銀、SS、プラスチックなどの素材とオクタゴン、オーバル、クッション、ラウンド、トノー、レクタンギュラーなどの形が一般的である。
月差
1ヶ月間における時刻の遅れや進みを表す言葉で、月差3分などと表す。機械式時計においての平均月差は10分である。
原子時計
原子や分子の発生する一定周波のエネルギーを利用することによって、30万年から160万年に1秒の誤差しか生じない超高精度な時計。世界標準時はこの原子時計を基準に定められている。
コーアクシャル脱進機
時計技術者であるジョージ・ダニエルズが開発した脱進機構で、通常2つのツメを持ったアンクルを使用するが、コーアクシャル脱進機は3つのツメのアンクルを使用する。アンクルの3つのツメと降り座に付いたツメ、そしてガンギカナがあることによって作業が分担されることになり、磨耗が軽減されてメンテナンス時期も長くなる。磨耗が少なく、潤滑油がほとんどいらないため安定した制度を保つことができる。
コインエッジベゼル
コインエッジベゼルや44㎜径のビックフェイスが、クラシカルで精悍な印象を際立たせるオリス「ビッグクラウン スモールセコンド ポインターデイ」ベゼル部の光の乱反射を防ぎ視認性を向上させるため、コインの緑部分のようなギザギザの紋様が刻まれたベゼルのこと。
高振動
テンプが1G時間に振れる回数を振動数と言い、この数が高いほど高精度とされている。一般的な振動数は1万8000~2万8800で、高振動(ハイビ-ト)とは2万1600振動より上のもののことを言う。
香箱
機械式時計において、動力源となるのがゼンマイ。そのゼンマイを収納している箱型の歯車のことを香箱と言う。香箱の中のゼンマイが巻かれ、そのゼンマイが戻る力によって香箱が周り、香箱の歯車に接している2番カナへと動力を伝えている。
香箱真
香箱にあり、動力源の一番はじめとなる軸。リュウズからキチ車、丸穴車へと伝わってきた動力を角穴車と組み合わさり、ゼンマイを巻く仕組みになっている。ゼンマイを巻き付ける真のこと。
香箱蓋
ゼンマイが飛び出さないように抑えておく蓋のこと。ゼンマイと香箱真は香箱本体と香箱蓋に挟まれた形となっている。
COSC
スイスのニューシャテルに本部を構える、公式クロノメーター協会(コントロール・オフィシャル・スイス・デ・クロノメーター)の略称。公的な検査機関が実施したクロノメーターテストで、一定以上の成績をあげた時計に対して、高精度時計の公式評価証明書である「クロノメーター」を発行する機関。
コートドジュネーブ
さざ波をモチーフにした装飾模様の一種で、時計では受けやローターなどに施されることが多い。その美しい模様は高級時計の証とされ、古い歴史を持つ。
コハゼ
香箱が逆回転しないように取り付けられる装置でコハゼバネで規制されている。様々な種類があるが、一般的に時計には退却型コハゼが使用される。
コラムホイール
クロノグラフの作動を制御する部品で、ピラーホイールともいう。上段は6~9程度の歯車の付いた円柱状で、下段はキアの付いた歯車の2段構造になった部品。円柱状の歯車にクロノグラフのアームやカム類が乗り上げたり、はずれたりすることで、クロノグラフのスタート&ストップを制御する構造になっている。一般的な「カム式」に比べ操作感が滑らかで、タイムラグなども少ない確かな作動性を有するが、組み込みや調整に熟練職人の手間を要するため、主に高級モデルに採用されている。
ゴールドモデル
「金無垢」モデルのこと。一般にゴールドウォッチという場合、金メッキや金張り加工のものは、これに含まれないことが多い。
コンバーチブルケース
風防を守るために裏返すことができるケースのこと。代表的なのはジャガールクルトのレベルソ。元々はポロ競技用として作られた。
コンビネーションケース
異なる2つの素材、また2色を合わせて作ったケースのこと。ベゼルに金、ケースにステンレススチールの組み合わせが一般的。
コンプリケーションウォッチ
パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、スプリットセコンドなど複雑機構がいずれか、または複数搭載されている時計のこと。製作には時間と高い技術を要するため、たいへん高価である。